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東大和のアイワールドに寄せて

日記服部多摩東大和市アイワールド2019/03/15/00:00

 自分の記憶の話をします。なのでたくさんの固有名詞が出ます。ですがその固有名詞を代名詞として捉え直すと、もっと、誰しもの話になるのではないかなと思って書きます。ただ、とても普通に感傷的な動機で書き始めたというのが、ちょっと恥ずかしいとも思ってます。

 自分が立川市立立川第九中学校を卒業する頃、あるいは立川市立若葉小学校を卒業する頃までか、いまや曖昧ですが、ちょっと週末に両親・姉と車(その頃は旧デザインの黄色のマーチでした)で出かけるパターンの選択肢の一つが、かつて存在した東大和のアイワールドでした。

 どうやら全国的なデパート(当時の認識。いまこれをデパートとは呼ばない気がする)ではないらしく、あっさりと潰れてしまったようですが、あのスペシャル感を忘れたくなくて、こうして思い出してます。

 こういう、子どもにはわからなかったけど経営的に弱くて潰れてしまった、当時の自分にとってはワクワクの源となっていたマイナーなデパート(仮)って皆さんあるんじゃないでしょうか。

 このご時世、インターネットも知らなかった頃の話をインターネットで検索するのも倒錯してる気がしますが、探せばやっぱりあります。アイワールドが存在していた時間を断片的に僕と共有している人たちの声。

 曰く、

「毎日がお祭りみたいなカオス感」。

 そうですね。僕はアイワールドとは週末の付き合いだったので、平日はわかりませんが、あの西東京の大型店舗らしいフェス感。独特でした。

曰く、

「下校時に入口の謎のケバブ屋さんで買い食い」。

 はい。入口にそんな感じのありました。同じく下校というシチュエーションでアイワールドに行くことはなかったですけど、これが行われていたことは非常にイメージしやすい。

 曰く、

「あそこで買ったものを見ると今でも思い出す」。

 さすがにいまアイワールドで買ったものは持ってないですけど、モノと購入場所を結び付ける感傷はいつでも発生する可能性がありますよね。

 曰く、

「メダルゲーム懐かしい!」。

 トドメみたいな言葉です。特に男には。

 無駄に広い駐車場の風景。実は友だちと自転車で遠乗りしていた範囲と大きく離れていないというロケーション。帰りの車の家族の雰囲気。場合によっては外食するびっくりドンキー。その頃やっていたプレステのRPG(サガフロンティア、FF8)、好きだった異性、活躍していた野球選手。行きはしなかったけど近くにあって必ず目にしていたジーンズメイト。こういったものがそう複雑でなく絡み合っているのが、こういうアイワールド的な存在へのセンチメンタリズムだと思います。

「あの立地も含めてのアイワールド」。

 そうですね。そう頻繁に行く訳でもなく、普通なら、今ほどでないにせよルミネもあり栄えてる立川駅の方が便利だったと思います。でも、あの郊外感のある東大和アイワールドに行くってのはまた別種の思い出なんですよね。立川駅に家族で行く場合は、色んな1日の過ごし方がありますけど、東大和アイワールドに行く日は東大和アイワールドに行った日でしかないんです。プラスどこかで外食するか否かくらい。本当に特殊な体験なんです。

 そういえば、駐車場で半裸の女性が歩いていたこともありました(子どもなので必死に目を逸らしました)。いま思えば犯罪感がありますね。でもそういった小事件の積み重ねが東大和アイワールドへの未だに尽きぬ感傷かもしれません。

 自然が人工物によって壊されるのとはまた別の動揺がありますよね。こういったものが今は存在していないというのは。現在はニトリだそうですが、今度自転車で訪れてみようと思います。そこで僕は何を感じるのか…。

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