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「クロスロード」とかを入れないクラプトンのギター名演ベスト20

日記エリック・クラプトンEric Claptonレビューギター2024/04/11/00:02

「エリック・クラプトンはもっとも誤解されているギタリストである」

 ということをずっと言い続けています。「私が一番彼のことをわかっている」と思ってます。「クラプトン信者」は僕のアイデンティティの1つなのです。

 世の中では「クラプトンのギターはクリーム期、特にライブだよね~」のような理解しがたいコンセンサスができあがってるようですが、それは間違っています。彼の魅力はそんなとこにはないんです。名演と名高い「クロスロード」はまぁ僕もさすがに「すげぇや」って素直に思いますけど、あれを至高のものとする価値観には限界がある。

 「クラプトンのギターはクリーム期、特にライブだよね~」的な価値観は特に2ちゃんねるでは昔から主流で(なんなら「以降はカス」まで付いてくる)、僕はそれに異を唱えてはレスバトルで何度も負けてきました。

 そんな中、私が提唱するのは「クラプトンのギターはxxx4年が最高だよね」、です。クラプトンが過ごしてきた「xxx4年」を見てみましょう。

1964:Youtubeで見ると「1964年のイギリスなのにけっこううまいなー」って思う。
1974:マジでルックスがカッコいい。
1984:あんまり知らない。
1994:『From the Cradle』の発売年。この時期こそがブルースを弾きまくるという観点でのクラプトンの頂点。同アルバムのツアーも最高。いわゆるレースセンサー期のあの音は一つの雛形を作ったと言えるでしょう。
2004:クロスロード・ギター・フェスティヴァルの初回年。この時期のクラプトンこそが彼のキャリアの中でもっとも優れたギターを弾いていた時期であり、実際この年の同フェスのプレイはキャリアの中でも出色のものが多く含まれている。
2014:前の年に出た『Old Sock』がけっこう良いアルバムだった。
2024:今年。

 こうして並べてみるとよくわかりますね。極論を言えば「クロスロード」なんてなくてもクラプトンのギタリストとしての魅力はよく分かるということです。

 それでは今回、「クロスロード」とかが入らない価値観によるクラプトンのギター名演べスト15を作りました。どうぞ御覧ください。複数日に跨って書いたので口調が不安定です。

1位 Call Me the Breeze - 2004クロスロード・ギター・フェスでのJ.J.Caleのバックでの演奏

 何も弾きまくってない。ただJ.J.Caleの音楽がそもそもクラプトンの音楽的理想の1つである中で、Caleの後ろで音楽を引き立てる演奏をし、ソロの時間が来たときにはしっかりスポットライトを浴びる。しかもそのソロがまるで書きソロかのように見事な構成をしている。曲の中でギターを弾くということと自身の音楽的理想を完璧にマッチさせた名演。

2位 Further On Up the Road - ザ・バンドの『The Last Waltz』での客演

 権威ある雑誌のレビュー等では(通好みとされるザ・バンドの方を強調したいという無意識からか)この日のクラプトンは「緊張していたのかイマイチ」のように書かれがち。しかしそうだろうか?王道ブルースでロビー・ロバートソンとそれぞれ2回ずつソロを取るという構成で、二者が比較されるのは免れない状況。確かにロビーのソロは圧倒的だ(それ故にロビー信者でもある私は「こいつがこんなソロ普通には弾けるはずないだろ。事前に考えてたのをアドリブ顔で弾いてるだけ」と平成中期から言い続けている)。しかしロビーに軍配を挙げた方が通っぽいというバイアスを取り除けばクラプトンのソロは見事の一言。メリハリの付いた構成に、ロビーをどこか意識したようなゴリ押しも混ぜるところも憎い。最終盤ではそのゴリ押しにソロの途中で客のテンションも上がっていく(そういう演出上のミックスでもあるかとは思うが)、という生々しさ。確実にキャリア随一の演奏だ。評論家の皆様には反省していただきたい。

3位 Tell Me That You Love Me - アルバム『Backless』収録

 シンプルに私がクラプトンで一番好きな曲であるという要素も大きいのは否めないが、地味なアルバムの中で、かつ存在感も普通の曲。そもそもリードギターがクラプトンであるかも確証はない。それでもこの曲を彩るギターフレーズからにじみ出るニュアンスは彼なんじゃないかなと思っている。曲自体も地味めではあるが、むしろ控えめなこのギターフレーズの奥ゆかしさから歌に入ることに、この曲を私にとって「一番好き」とさせてしまった魅力がある。

4位 Someday After A While - アルバム『From the Cradle』収録

 スタジオ盤で唯一、クラプトンが全編を通してライブと等しい弾きまくりをしている『From the Cradle』。他にも選べる曲はありますが、その中で一番ハイライトと言えるのはスローブルースのこれでしょう。世の中一般の(クリーム期を除く)クラプトンのギターのイメージそのものな演奏として最高の公式のスタジオ演奏という点でこれは入れたい。

5位 Have You Ever Loved a Woman - 2004クロスロード・ギター・フェスのバージョン

 さっそく2つ目の 2004クロスロード・ギター・フェス。アルバム『レイラ』など、この曲でクラプトンはいくつも名演を残してきましたが、その中でも最高峰なのがこれです。静と動の切り替えが素晴らしく、その中でよく謂われなくされる「ペンタ一発」とのレッテル貼りに反発するようなおいしいフレーズも使っている。緩急自在の極地。

(この辺から実際順不同)

6位 Stone Free - ジミヘンのトリビュート盤『Stone Free: A Tribute To Jimi Hendrix』収録

 1993年のジミヘントリビュートアルバム。4位の『From the Cradle』同様の時期ではあるんですが、いかにもクラプトンなアレンジにしたうえで、楽しそうに弾いてます。

7位 Wait Till Your Daddy Comes Home - Jamie Oldakerの『Mad Dogs & Okies』収録

70年代のクラプトンを支えた名ドラマー・ジェイミー・オルデイカー。個人的にも超好みのドラマーであります。そんな彼のソロ名義アルバムにクラプトンは参加しているのですが(その曲もめちゃくちゃ良い!)、別の曲でカントリー・ギターのスーパーアイドルであるヴィンス・ギルがメインの曲でもソロを弾いています。

 余談ですが、ヴィンス・ギルはクラプトンなんか足元にも及ばない凄いギタリストですが、けっこうクラプトンに言及することも多いし、ロックっぽい曲だと影響を感じるんですよね。

 この曲は「Lay Down Sally」の発展版という感じ。すごくカッコいい。

8位 Don't Think, It's Alright - ボブ・ディランの30周年記念コンサートより。

 とにかくダサい!!!!!!!!!レースセンサー期のクラプトンが馬鹿にされる要素のすべてが詰まっている最高傑作です。クラレンス・ゲイトマウス・ブラウンのバージョンでも似たようなアレンジで参加してますが、こちらの方が圧倒的にダサく、愛おしい。

9位 I Shot the Shriff - 2004クロスロード・ギター・フェスのバージョン
 一瞬これが1位でもいいかなと思ったんですが、この時期のライブのこの曲ではいつも毎回毎回最高のソロを弾いていたことは信者には周知の事実だと思います。そういう意味でこの位置に。スティーブ・ガットらバックバンドと一体になって徐々に、徐々に盛り上げていくアンサンブルは見事。クラプトンというと「お手本」的なイメージが強いかもしれませんが、「そのフレーズそこから入るのか…」とか「そこで緩めるの…」のように彼にしかない感性が感じられます。

10位 Yer Blues - ローリング・ストーンズの『Rock and Roll Circus』での演奏

 (顔が)カッコよすぎる。セミアコ弾いてもカッコいい!ジョン・レノンのゴリ押しソロと比較すると一目瞭然ですね!

11位 Key To The Highway - Derek & The Dominosのライブ盤『Live At The Fillmore』のバージョン

 ドミノスのライブ盤での演奏は全般でトーン含め素晴らしいんですが、一個選ぶならこれですね。近年はアコギ弾き語りのイメージが強いこの曲ですが、最初はドミノスですからね。

12位 Just Like A Prisoner - アルバム『Behind The Sun』収録

 『From the Cradle』を除けば珍しい弾きまくりスタジオ・テイク。今回初の80年代。オールド・ファンが嫌いそうなシンセ全開の80年代サウンドの中、中間部・ソロでライブ時顔負けのソロを弾いてます。おじさんたちは逆にこれを知らなくて、聴かせたら感動されることが多いです。

13位 Crosscut Saw - アルバム『Money And Cigarettes』収録

 これを入れたのは我ながら隠し球的ですね。これも80年代。明らかにアルバート・キングのバージョンを下敷きにしたブルース。ソロの感じも下敷きのままでなんの新規性もないカバー。ライブでもそれは同様。それでもなんか良い。80年代サウンドとクラプトンのルーツ志向がちょうどいい塩梅でミックスされててそれが新鮮に感じるのだろうか。

14位 Sunshine Of Your Love - アルバム『Disraeli Gears』収録

 冒頭でクリームを否定しまくりましたが、そもそもクリームはライブじゃなくてスタジオ録音が良いんですよね。そんな中でどの演奏が一番良いかと言ったら有名曲のこれじゃないでしょうか。同時期のライブからは想像できない落ち着いた構成されてるソロ。名演だと思います。

15位 Good To Me As I Am To You - アレサ・フランクリン『Lady Soul』での客演

 こちらは元々一定以上の信心があるクラプトン信者界隈ではトップクラスの名演として知られる客演。この曲ソロタイムはないんですよ。確かにソロなしにその域まで評価されるまでに至った演奏は見事だと私も思います。。

(以下、可能であればベスト20にしたいのでその候補)

16位 Rockin' Daddy - ハウリン・ウルフ『The London Howlin' Wolf Sessions』での客演

 まぁブルース好きな人にはなんか評価低そうですがね、この盤は。1曲目のこれなんか普遍的なカッコ良さがあると思いますね。これの3年前ですがカッコ良さの質としては10位のYer Bluesと似てるかも。

17位 Ain't Gone 'n' Give Up on Love - スティーヴィー・レイ・ヴォーンのトリビュートライブより
 元々SRVのバージョンでもスローブルースだったし、このバージョンでもそれは同様。明らかにSRVのトーンを意識してます。で、ここはけっこう大事なんですが、SRVはクラプトンなんかよりブルースギタリストとしては圧倒的にテクニックが上で、この手のギタリストには我々クラプトン信者は尻込みしてしまうものですが、この曲に関してはクラプトンの方が優れた演奏を残しているのではないかと感じます。それはまぁ主観なので強制はしませんが、(クラプトンの)テクニックに(自己投影して)コンプレックスを感じている信者の皆様、この曲でSRVに立ち向かいましょう。

18位 Ice Cream - ウィントン・マルサリスとの共演ライブ盤『Play The Blues: Live From Jazz At Lincoln Center』より
 このライブ盤、割と衝撃だったんですよね。意外性というよりも逆に直球過ぎて。タジ・マハールも入れて「Corrine, Corrina」なんかやっちゃって(言うまでもなくウエスタン・スイングの名曲)。ルーツ愛をこんなにネイキッドなスタイルでクラプトンが表明するとはね、という。その中でも1曲目のここでのギターはなかなか面白い。クラプトンらしくありつつこのライブでないと絶対出てこないソロだった。

19位 Ain't Nobody's Business - 映画『Nothing But The Blues』収録
 これは本当はもっと上位でもいいんですが…どちらかというとギタリストではなくミュージックとしてのエリック・クラプトンを語るなら確実にもっと上に来る録音ですよね。。18位と同じで「ルーツに向き合うクラプトン文脈」ですね。ベッシー・スミスの名曲をこんなに売れ線アレンジ(?)にしてしまうクラプトンイズムも凄いですし、それをブルースアルバム『From the Cradle』のツアーのアンコールにしてしまうのも本質的。映画『Nothing But The Blues』でようやく去年だか一昨年だかやっと公式音源となりましたが、これが収録されてるのはDVDのみ…なんともったいない。

 歌とピアノを活かしたしっぽりアレンジから、いかにも(ある意味ダサいとも言える)クラプトン流ギターソロに変えてく流れも衝撃的だし、異国から自己とアメリカンルーツを融合させるという意味でこんなに個性とクオリティを両立させた人、いないんじゃないかと思います。

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