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『Skip』by Skip Battin - 後期バーズのベーシストのソロ作はレトロモダンなロックンロール・ポップ(1972)

Skip Battinスキップ・バッティンThe ByrdsKim FowleyClarence WhiteRoger Mcguinnカントリー・ロックフォーク・ロックSSWベース1972アメリカ2017/10/29/00:00

『Skip』by Skip Battin

一行でまとめると…


 全体的にはレトロな、特にロックンロールの感覚だけれども、どこかサイケで怪しげかつ軽妙なポップス。バーズのような雰囲気はある。クラレンス・ホワイトやロジャー・マッギンも存在感発揮。ザ・バンドと一緒のディランにも通ずるものが。

前書きと曲目


 70年代バーズのベーシスト、スキップ・バッティン。そのソロデビュー作。その後ニュー・ライダーズ・オブ・ザ・パープル・セージ(New Riders Of The Purple Sage)やフライング・ブリトー・ブラザーズ(The Flying Burrito Brothers)でも弾いているように、カントリー・ロックの重要人物。バーズの人たちのソロ作はどれも良いですが、この人はその中でも異色な内容。

1. Undercover Man
2. Ballad of Dick Clark
3. Captain Video
4. Central Park
5. Four Legs Are Better Than Two
6. Valentino
7. Human Being Blues
8. St. Louis Browns
9. Cobras
10. My Secret Life

ぶっきらぼうなボーカルのせいでポップになりきれなくて、そこが良い


 まず、自分的にはこのアルバムの第一印象はあまり良くなくて笑、買ったもののしばらく聴いてなかったんですが、何かの弾みで再度聴いた時に、あれ?けっこうイケるなこれ、ってなって、じゃあ改めて全部聴いて書いてみようかなと。

ここまでで色々「怪しげ」とかそういう説明をしていますが、やはりノベルティというか、イロモノ感があるので、ちょっと敬遠してたんですが、本質的にはレトロな良質ポップスだなぁと気付いてみると、好盤だと思い直しました。

 作曲はすべて自身と、以前からコンビを組んでいたキム・フォーリー(Kim Fowley)とのもの。ギターやマンドリンはクラレンス・ホワイト(Clarence White)、ロジャー・マッギン(Roger Mcguinn)が12弦ギターで参加。バッティン自身は歌はもちろんピアノにベース。

 出だしの「Undercover Man」からしてもはやB級ソフトロックかってほどのツービート。ドタバタしたポップスですが、これが割りとクセになる。それこそ下品なプログレ・ポップ(よく知らないですが…)のような、よくできた一曲。

「Ballad of Dick Clark」はこのアルバムの特質を一番よく表してるのじゃないかなと思います。ちょっとコミカルなロックンロールで、どことなくザ・バンドと組んでる時のディラン感もあります。でも途中で入るドゥーワップなコーラスなんかは思いっきりレトロ。こんな感じで、昔目線なのにどこか捻くれてる、それがこのアルバムの特徴です。それにはスキップ・バッティンのぶっきらぼうなボーカルが影響してると思うのですが、このぶっきらぼう加減が、下手に洗練させず、ちょうど良い塩梅のルーツ・ロックに仕立て上げてます。クラレンス・ホワイトのストリング・ベンダーを使ったギターも最高!

「Captain Video」はバーズ路線のスペーシーな曲(ちょっと初期バーズってスペーシーじゃないですか?)。その雰囲気もあって、流し聴きしてると気付かないですが、ブルース進行の曲で、後半どんどんダミ声を張り上げていく感じになるので、最終的にはスペーシーだったものがスワンピーにしれっと変わっていく面白い曲。ロジャー・マッギンの12弦ギターがバーズっぽさに大きく寄与しています。

「Central Park」はおちゃらけたラグタイム調。バッティンのぶっきらぼうでふざけたようにも聞こえる歌唱にはジャストフィット。マンドリンも入っていて、オールド・タイミーです。

「Human Being Blues」は「Undercover Man」と同じでドタバタ系ポップス。これの聴きどころはクラレンス・ホワイトのギター。こんなドタバタしたふざけた曲で彼が弾いてるってのも面白いですが、演奏内容自体はしっかりしてます。凄まじいテクを使ってる訳ではないですが、曲にうまくフィットしてます。

「St. Louis Browns」はたぶんこのアルバムで一番真面目な曲。曲名は野球のセントルイス・カージナルスの以前の名称なので、歌詞が真面目かはちょっとよくわからない。でも19世紀の「セントルイス・ブラウンズ」っていう名前を出すことがやっぱりレトロな雰囲気に一役買ってるかもしれません。泥臭い南部な演奏で、全体的にコミカルな手触りのこのアルバムの中でも真っ当に名曲。その最大の立役者はやっぱり最高中の最高の演奏をしているクラレンス・ホワイト。これはたぶんラウンドネックのドブロで弾いてるんじゃないかなぁと思います。ロック界でのクラレンス・ホワイトの演奏の中でも屈指のプレイです。

 続く「Cobras」は、何っぽいかって言われたら、意外にもちょっと『ジギー・スターダスト』の頃のデビッド・ボウイが近いんじゃないかなぁと思います。良い曲なんだけど退廃的で気だるい。

 ラストの「My Secret Life」はワルツの小品で、ビートルズのポール曲感もありますね。ずっとドタバタしていたこのアルバムですが、最後の方は比較的にしんみりしながら収束していきました。

 バッティンは60年代にエバーグリーン・ブルーシューズ(Evergreen Blueshoes)というサイケポップバンドをやっていたり、やはり少し不思議なところがあるのでしょうね。このアルバムもそういうところが全体的にあるのですが、それでも人を遠ざけるような不思議さではなく、むしろポップさを引き立てる良いスパイスになってると思います。

 そしてクラレンス・ホワイトが大きく貢献しています!ここは外せないですね!

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