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『Formerly Fat Harry』by Formerly Fat Harry - 今まで聴いてなくてゴメンなさい、な最高の英国スワンプ(1971)

Formerly Fat Harryフォーマリー・ファット・ハリーブルース・バーソルBruce BartholLaurie AllenPhil GreenbergGeorge KhanGary Petersonスワンプ・ロックフォーク・ロック1971イギリス2021/05/25/22:51

『Formerly Fat Harry』by Formerly Fat Harry

一行でまとめると…


米国感のある英国モノでは一番好きかもしれない。スワンプと良く言われるが「英国のザ・バンド」感もあるのと、個人的にはグレアム・ナッシュのソロと似た良さを感じる。

前書きと曲目


主に紹介されるのは英国フォークの流れの中で、「英国スワンプ」と呼ばれることが多いですね。強調されるのはメンバーに1人米国人がいること。個人的にはいわゆる「英国のザ・バンド」にカテゴライズしても構わないものだと思うし、かと言ってパブロックではなく「木漏れ日フォーク」的な言われ方も多いという、けっこう不思議なバンドにも思います。ただ、とにかくめちゃくちゃ良いです。

1. Passing the River
2. My Friend Was a Pusher
3. About My Life
4. Please Go Away
5. I Saw the Ringing of the Bell
6. Tell Me All About It
7. Captain Heart
8. Goodbye for Good

「◯◯っぽい」で言うと色んな名前が出せるバンド


 最初にこのバンドを知ったのは、2004年辺り、英国フォークがたくさん紙ジャケになってた頃に出版されたストレンジ・デイズ社「British Folk & Trad. Rock ブリティッシュ・フォーク&トラッド・ロック」でのこと。「SWAMP, COUNTRY - US TASTE FOLK ROCK」のコーナーに記載されてあり、当然注目はしてたのですが、買わないまま時は過ぎ…。今年たまたま中古屋で見つけたので買ったら本当に最高で、今まで聴いてなくてゴメンなさい、と。

 メンバーは、

ローリー・アレン(Laurie Allen)…ドラム
ブルース・バーソル(Bruce Barthol)…ベース
フィル・グリーンバーグ(Phil Greenberg)…歌、ギター、作曲
ジョージ・カーン(George Khan )…サックス
ゲイリー・ピーターソン(Gary Peterson)…歌、ギター、キーボード、コンガ、作曲

 ちなみに6曲目にはペダルスティールギターも聞こえます(裏ジャケのクレジット見ても誰かわからず)。

 このブログではあまりバイオグラフィカルなことは書かないようにしていますが、「カントリー・ジョー&ザ・フィッシュのベーシストであるブルース・バーソルが渡英して結成した」ことは自分の記憶のためにも書きます。また、録音はアビーロードスタジオですね。

 演奏は上手いと思います。が、ローリー・アレンのドラムがなかなかに個性的な間を持っていて、ドタバタに感じる瞬間もあります。あと上記ブルース・バーソルのベースは歌心あって良いですね。それからピアノもいるバンドなのに間というか、空白がすごく多くて密度が薄いところも面白いです。

 1曲目の「Passing The River」のコーラスで確信。これはアメリカンルーツロック好きには最高の盤だと。個性や変なコード展開をなくしたザ・バンド、という形容も思い浮かべましたが、やはり「◯◯みたいな感じ」で説明せよと言われたらグレアム・ナッシュのソロが浮かびますね。ああいうキャッチーさがあります。どことなく音像にはジョー・ウォルシュのソロも思い起こさせます。

 全体的に見ても、(ほぼ)英国のバンドと知ってるからこそ「英国ロック特有の曇りがかった…」みたいな常套句を言いそうになりますが、先入観を取り除いて聴けばストレートにアメリカンにも思います。もちろんそういう常套句にあるような「湿気」はあるのですが、なんていうか、オールマンとかにもあるタイプの湿気と感じます。

「About My Life」なんかはどちらかというと70’s SSWのような佇まいですが、サビ?ではなかなかに決まったハモリを聴かせてくれます。ピアノの入り方も相まってJ.D.サウザーの1枚目を思い起こします。

 さっき「パブロックではない」と書いてしまいましたが、「Please Go Away」はピアノが引っ張る、かなりそれっぽい曲です。どうやらフォーマリー・ファット・ハリーはエッグス・オーバー・イージーと人的交流があるようなんですが、かなりこの辺りの雰囲気は近いような気がします。

 ざっと検索してみた感じ、他に比較対象となってるのはプレインソングやイアン・マシューズのソロだったりのようですが、アルバム後半の方の曲はそういう趣が確かにあります。

「Captain Heart」はソフトロック風味のポップな曲。「Goodbye For Good」はラストを意識したような曲調。ギターにたっぷりソロを与えてます。派手さはないですがなかなかに聴かせてくれます。

 という訳で、見出しに使った「スワンプ」という単語はほとんど使いませんでしたが…色々と他の言葉を使って説明しました。素直にアメリカンルーツロック的に聴くも良し、米国的な英国フォークとして聴いても良し、とにかくマイベストに入る最高の盤でした!

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『Treasures Untold』by The Doc Watson Family - クラレンス・ホワイトとの共演もあるが…ギター云々よりはフォークミュージックを楽しむ盤(1964録音)

Doc Watsonドク・ワトソンClarence Whiteクラレンス・ホワイトMerle Watsonマール・ワトソンブルーグラスブルーグラスギターギター1964アメリカ2021/05/11/00:02

『Treasures Untold』by The Doc Watson Family

一行でまとめると…


ブルーグラス・ギターのパイオニアであるドク・ワトソンに、当時15歳である息子のマールら家族らをメンバーに迎えたニューポート・フォーク・フェスティバルのライブ録音。クラレンス・ホワイトが参加している4曲があるのは特筆ポイントで感動だが、ギターギターと聴くよりいい感じのフォーク音楽を体験するライブ盤です。少なくともドクのギターに関しては同じ曲をやっているスタジオ盤の方が良い。むしろクラレンス・ホワイトのファンがコレクションした方が?

前書きと曲目


 ご無沙汰です。ディスクユニオンで見つけて購入しました。

 ドク・ワトソンはギターも音楽も大好きですが、うーん…これなら同じ曲をやってるスタジオ盤の方が彼の本質に近い気がします。

 とはいえ、的な側面もあるのでそういうとこを中心に書いていければ良いと思います。

1. Introduction
2. Lights in the Valley
3. Beaumont Rag
4. I Heard My Mother Weeping
5. Billy in the Low Ground
6. Omie Wise
7. Reuben's Train
8. Hicks' Farewell
9. Rambling Hobo
10. White House Blues
11. Jimmy Sutton/The Old Buck Ram
12. I Want to Love Him More
13. Grandfather's Clock
14. Chinese Breakdown
15. Handsome Molly
[with Clarence White]
16. Beaumont Rag
17. Farewell Blues
18. Lonesome Road Blues
19. Footprints in the Snow

最後にはちょっとした感動が


 既に書いてますが、ジャンルとしてもロックとかじゃないし、観客の歓声が入ってるだけで、テイクとしてはとりわけ素晴らしい!ってものがそんなにある訳じゃないんですよね、この盤は。

 ただ、インスト曲も当然何曲かあるのですが、イメージとしてドク・ワトソンのギターから受ける印象がスタジオ盤とそんなに変わらない、というのは一つ面白い点としてあるかもしれないです。変わらない個性のようなものを感じます。

 本当に、このライブの場所で家族と一緒に(ブルーグラスというより)フォーク・ミュージックを楽しんでいる。そんなパッケージがこのライブ盤かなと思います。楽器と関係なくオールド・タイミーな当時のライブの雰囲気を楽しめる、そういう盤ですね。

 クラレンス・ホワイトとの共演であるラスト4曲に関しては主役をクラレンスに譲ってる印象。

 いずれも定番曲であり、そういった曲でこの2人が共演してることは感慨深いです。特に「Footprints in the Snow」は元々メロディも素敵な名曲ですが、そんな曲をコンパクトにまとめて、両者とも素晴らしいソロを披露しているのはジンと来ます。


 書き始めてみたものの、そこまで印象を受けなかったのに、書いた時間を無駄にするのも忍びなく、久々の投稿ですが半端な記事になってしまいました。もうちょっとちゃんと書けるものを選びます。

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『パックザケッツ』by オセロケッツ - 森山公一さんの才能溢れるヒネくれ・ポップロック、フォーキーな側面もあり詩も魅力(1998)

オセロケッツ森山公一中井英行丸山茂宏松崎智浩長田進斉藤有太JPOPポップスギター・ロックコミック・ソング浅森坂1998日本2020/04/11/02:53

『パックザケッツ』by オセロケッツ

一行でまとめると…


カントリー・ロックバンドの「The Ma'am」、浅田信一さん・坂本サトルさんとの「浅森坂」等の活躍がある森山公一さんのそれら以前のバンド。ヒネくれた世界観の男気系ロック。だけどポップ。コミック・ソング的?さらにフォークな面もあるファースト・アルバム。ヒネくれと言っても突飛すぎる展開はなく、その印象は主に歌唱と歌詞から。

前書きと曲目


 以前、SMILEの4thの記事を書いたように僕は浅田信一さんが大好きなのですが、彼がクロスビー・スティルス&ナッシュをパロるかのように坂本サトルさん・森山公一さんと組んだのが「浅森坂」。そこで初めてこのバンドのフロントマン・森山公一さんを知りました。浅森坂以前にやっていた作品を聴いてみよう!と集めだしました。

 また、本作のプロデュースはDr. StrageLoveの長田進さん。こちらは以前記事にしたthe autumn stoneの『Good-bye Ram's Hill』のプロデュースでもあります。ちょっと嬉しいですね。

 オセロケッツのアルバムは『MADE IN STUDIO』『Eject』と続き、以後はソニーからのリリースでなくなり、そこまでしか持っていないのですが、そしていずれも素晴らしいのですが、個人的にはこの『パックザケッツ』が一番好きです。

1. ヘアチェッカー
2. ジェリービーン
3. しゃけのうた
4. マフユ
5. ボディガードはクレジットカード
6. 灰色大人島
7. フォークまち
8. アンサーソン
9. 病花
10. クレイジーファミリーパック
11. 答えて!エイリアン
12. 川辺の日常
※基本的に作詞作曲・森山公一さん。3と12が作詞・中井英行さん、10は作詞・森山さん/中井さん、また1は「additional words」として中井さん、丸山茂宏さんがクレジット。シングルは1・4・8。

日本語のメロディへの乗り方が素晴らしい!


 メンバー(敬称略)は、

森山公一…ヴォーカル、コーラス、アコギ、エレキ、ハーモニカ
中井英行…ベース、コーラス
丸山茂宏…エレキギター、コーラス
松崎智浩…ドラム、パーカッション、コーラス

 そして、プロデューサーの長田進さんはエレキや3のハーモニカ、11のヴォコーダー、12のラップスティールなど。そしてセッション鍵盤奏者の斉藤有太さんが参加してます。特に「ホンキートンクピアノ」とクレジットされた9が素晴らしいです。

 ちなみに歌詞カードには「ノイジーなサウンドに感じられる部分に関しては、制作者の意図によるものです」と書いてあります笑。あと掲載されている写真も何かのパロディなのか、かなり面白いです。ぜひ現物を見てもらいたい。

 曲に行きます。自分は最初の2曲「ヘアチェッカー」「ジェリービーン」で、これはとんでもないアルバムだともうわかりました。

 前者は薄毛が気になりだした若者の歌なんですが、曲としてはハード目のロックで、メロディへの日本語の乗り方がバツグン!(かなりカタカナ使ってますけど笑)。ずっと「トリートメント効果」とか言ってるだけなんですけど。

 後者はオールディーズ的な文脈を発展させた素晴らしいポップス。歌詞にはマカデミアンナッツが出てきたりする豆の歌です。卑猥な比喩にも聞こえます。他にも「ラヴィン・スプーンフル」「スプーキー・トゥース」と直接的にバンド名が出てきたりします。ギターはイントロのフレーズも印象的だし、チェット・アトキンスの「Yakety Axe」みたいなフレーズも歌中に入ってきます。こちらも「ヘアチェッカー」と同じで日本語が気持ちいい。歌いたくなる。

「マフユ」はシングル曲。自分が聴く限りでは、実は下品な比喩があるとかでなく、まっとうな良い曲。ちょっと、ここらで売れたろう、的な事情も感じます笑。

「ボディガードはクレジットカード」は全体の中で強く印象に残るほどではないですが、タイトルで、こういうこと歌うバンドなんだ、っていうのがある程度わかりますね。「支払いはパパさ」とのこと。ちなみに、歌詞カードに「味方」を「見方」とする誤植があります。

「アンサーソン」はハイライトの一つとなる大名曲。ものっっすごく雑な例えをすればザ・イエロー・モンキーでいうところの「JAM」みたいな存在感の曲と思います。リアルタイムでファンだったわけではないので、あくまで自分的には。森山公一さんのソロライブでもアンコール前ラストで演奏されていたりするようです。とても普通のコード進行に、まったく情景的イメージが沸かない歌詞、だけど聴き入ってしまいます。歌詞は少ないのですが、1番2番でけっこう変えてくる歌いまわしも最高にカッコいい。

 続く「病花」は逆に、という訳ではないですが、自分のようなタイプのリスナーにとっては、「アンサーソン」に負けず劣らずの名曲です。曲としてはフォーク~カントリー・ロックの小曲。それでいてギターはかなり歪んでます。後にThe Ma'amでカントリー・ロックをやることの前触れが既に表れています。ちなみに、今はわかりませんがiTunesで取り込むと「病火」と曲名が間違った状態になります。

「クレイジーファミリーパック」もまた素晴らしい。名曲の安売り状態です。「ヘアチェッカー」同様、ハードでミディアム目のテンポ。オセロケッツはなんだかんだで男気系ロック・バンドなので、けっこう使うのは珍しい空間系エフェクト(アナログ・ディレイ?)を使ったギター、謎の歌詞。グラム・ロック的なイメージも。

「答えて!エイリアン」が続きます。これが一番ヒネくれてますが、中毒性がある。エイリアン的なヴォコーダー、キーボードからと思われる刑事ドラマみたいなサックスかウインドシンセ的なフレーズ、ふざけた歌い方、突然エレキ弾き語り風になる最終盤の展開、その最終盤での全員で歌ってる英国アンセム感、同じくキーボードと思われるホーン・セクション…。特にホーンの感じからも、どうしても浮かんでしまう言葉は「ビートルズ」です。

 3拍子の「川辺の日常」が締めくくりになります。記事中でパスした「しゃけのうた」と合わせて、ハーモニカが鳴り響くフォーク・ソングです。こういったフォーキーな感覚もオセロケッツは時折出してきます。ゲストの長田進さん、斉藤有太さん、それぞれラップスティール・ギターとハモンド・オルガンを弾いていて、これがまたいい感じ。曲名からわかる通りアルバムで一番、風景描写的な歌詞で、個性的な曲が続く中、こんな感じでアルバムが終わるのもなかなか乙なもの、と思います。

 ちなみに、この最後の「川辺の日常」はベースの中井さんが作詞。後の作品でも、森山さんだけでなく中井さん作詞曲があることからも、けっこう歌詞には気を使っていたのかなと推察されますね。

 と、いう訳で、久しぶりの前回投稿から自分なりに間を空けずに、オセロケッツのファーストについて書いてみました。森山公一さんは、今は現在進行系でカントリー音楽界で活躍しておられますので、今後も追っていかなくては!と思ってます。The' Ma'amの2枚もソロアルバムも既に確保済みです笑。いつか書くかもしれません。

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